Melting

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※同軸リバです(R18)  4348文字


うち捨てられた廃船から頂戴した大量の酒瓶。聖夜の宴だからと、気前よく出したのが間違いだった。案の定いまそれは、綺麗に空になって転がっている。
おれが飲んだのは一本だけで、あとはもちろんコイツが一気飲み。他の奴らが寝床に去った後も、あるだけ全部飲み干しやがった。他に買っておいたワインも、いつの間にか全部空になっていた。
「おいおい、おめェ…おれのキープはどうなってんだ」
「お前の?ンなもん知るか」
「そのワインはちょっとしたもんだったんだぜ〜?まっさか、全部飲まれちまうとはよォ」
サンジは空のワインの瓶を逆さに振りながらゾロを睨み付けた。
それにしてもコイツは、いくら飲んでも酔った試しがねェ。一体どんな酵素を体内で培養してるんだか。
「せめてワインだけでもさあ」
「てめェにゃこれ以上飲ませられねェ」
「あァ!?なんでだコラ」
ゾロの首根っこを掴み、鼻先まで顔を突きつける。しかし、どうにも力が入らない。
んん?おかしい。
ぐるりと天井が回り、天地が傾いた。身体が床に張り付く。
「…なんでって?」
ん、と唇が柔らかなものに封じられた。舌先がゆるりと滑り込み、次第に深く絡めとられてゆく。僅かなワインの残り香が鼻をくすぐった。
濡れた唇から零れたゾロの吐く息は、熱い。
「てめェ、この前飲みすぎて速攻意識無くしちまっただろうが。もう二度もそうはさせねェぜ?」
「そうだっけ…?覚えがねェけど」
「意識ねェ奴とはヤれねェからな」
そうはいいつつ、コイツも少しばかり頬が上気してるんだが。首筋、鎖骨の辺りも。耳元に溜まる息も、ずっとワインの香りをまとっていやがる。
ピクリ、と、自身が反応した。
あ、やべェ。
おれから目を逸らさない男を間近で見つめ返しながら、ほんのりと色付いた首筋に指を伸ばし、辿る。項、耳朶、肩甲骨から、滑らかな背中へ。
こういう時はもう止まらねェ。
コイツが目を細め始める。ほら。
小さく息を吐き、おれの肩口へ顔を埋める男の厚い胸板が、呼吸で波打ちながらおれに密着して来る。
もう、ダメだ。
辿る指のその先を慎重に選ぶ。
既にもう固く張ったゾロの昂りと自身のそれを擦り合わせる。と、肩口で熱い息が零れた。
嵩を増した二つの括れを同時に握り込み、上下に何度も揺らす。思わず自分も声が漏れそうになる。
「っ、もっ、と…擦れ」
肩を掴む指に力が篭った。
頂点にきつく指を当てる。ぐぐ、と一瞬固く強ばったものが小刻みに震え、掌の中で脈打った。熱い液体が下腹に広がる。
「あ、……ッッ」
「ッ……!」
ほぼ、同時だ。
乱れた呼吸が混じり合う。
サンジは、ヌルついた指を休めずにスルリと脇へ滑らせた。
息を整える間ももどかしい。
「……な、先、いいだろ」
「…ん」
コイツがこういう時に曖昧な返事をするのは決まってる。OKのしるしだと。
脇、背中を辿り、尾てい骨に触れると、ビク、とゾロの背中が揺れた。
ゆっくりと、締まった筋肉の隆起を感じながら濡れた指を窪みに運ぶ。
まだ綻んでいないその入口に体液をまぶし、そっと中指を押し入れる。
「う」
「久しぶりだよな…こっち」
肩口に埋めたままのゾロの頬が、サンジの頬に少し寄せられた。
ああ、この反応、マジでやべェ。
再び張りを増す昂りから意識を逸らしつつ、仰向けにゾロの身体を返す。
「気ィ遣うな、って」
「分かってる」
隙なく鍛え抜かれた、頑丈な身体にしっとりと、汗が浮かんでいる。この身体を作るための身を裂くような鍛錬、戦闘。魔獣と畏れられるのも道理だ。だけどおれの知っているゾロは、それだけじゃねェ。
指を数本に増やし慎重に解してゆくに連れて、少しずつ顎が上がるゾロの首筋を緩く食むと、声を漏らすまいと引き結んでいた唇が思わず解けた。
「んァ、ッ」
「久しぶりに聞いたなァ…てめェのその声」
「っ、るせ」
耳朶を口に含み、柔らかく吸い上げながら、右手でさらに深くナカを穿つと、ゾロの呼吸が更に早まってくる。
「も、いい、早く、しろ」
「ん…待てよ、まだ」
太腿を掴み、大きく割り開く。
指を入れ込んだまま、中心に大きく漲った芯をサンジは口に含んだ。舌で迎え、唇で大きく包み込む。ビクリ、とゾロの下腹部が揺れた。
「ん、あッ……て、め」
唇で甘く扱くと同時に、右手の抽送を再開する。逃れようとジリジリとずれ上がるゾロの身体を、左肩に腿を乗せて強く引き戻し、休みなく攻め立てるとゾロは呻いた。
「ッ、…く、そ、後で覚えとけ、…っ」
「はは…覚えてるぜ?もちろん」
徐ろに唇を離し、指を解放すると、サンジは綻んだ部分に怒張した自身の熱い肉棒をあてがった。ゾロの吐く息が長くなる。いまから迎えるおれのモノへの構えと…期待がそうさせるのか、そう思うとゾクッと腰が震えた。
「入れんぞ?」
膝裏を押し上げ、ぐ、と初めの方に力を入れると、すんなりと肉棒が飲み込まれてゆく。
たまらねェ。
少しずつ、慎重に押し込みながらゾロの顔を見遣る。この、きつく目を閉じ耐えている顔が解かれ、快楽の元に跪くその瞬間。その瞬間にサンジは、激烈な充足感をいつも覚えるのだった。それは、そんなものは、今までの人生でかつて感じたことのない感情だ。この、大剣豪を目指すゾロというとてつもなく強い男が自分だけに見せる最も弱いその瞬間。他の誰にも晒さないだろう、その弱い所をサンジだけに委ねるその瞬間こそ、切ないほどの情欲を満たし尽くしてくれる。
おれだけに。
これから先、コイツの命が誰かの手で千切られる時が来るのだとしても。
いまその瞬間は、永遠に、おれのものだ。
おれのものだ、ゾロ。
おれの全部を注いでやる。だから、泣いていい。おれの腕の中なら泣いていい。泣いてくれ、ゾロ。
その真っ直ぐな美しい鋼が、限界を超えて折れないように、おれを振り返れ。いつだって、おれはお前の、お前の帰る場所でいたい。
「あ、すげェ、い、い、ゾ、ロ……ッ」
「ぅア、あぁ、ッ、!」

最奥を強く突き上げ擦り上げると、震える喉を晒してゾロは果てた。
次の瞬間、サンジの濃い白濁がゾロの深い深いところへ注ぎ入れられた。

伸ばされた手を掴みキツくゾロを抱きしめる。

「はーー、はーー、……」
「あーー……大丈夫か?悪ィ、加減出来なくてよ」
「加減なんざした事あったか」
「あったたろ!最初とか…最初とか」
「最初だけじゃねェか」
「ま、まあ、そんな事もあったか?って、てめェは最初っから加減どころか飢えた獣だったろ!やっぱフェアにいかねェと」
「お前が悪ィ」
「はあ?なんでおれだよ」
「……自覚の足りねぇ奴には何度でも教えてやる、来いこっち」
掌を上に向けくいくい、と人差し指で呼ぶ。不遜な笑顔。ついさっき、おれの真下で突き上げる快楽に屈していた奴にはとても見えねェ。
半身を起こし近寄ると、グイと腰を引き寄せられ、半開きだった口に噛みつかれた。舌を喰らわれるかと思うほど口内を蹂躙される。これだ、この獣に、おれはいつも為す術もない。
耳朶から下へゾロの唇が滑り落ちてゆく。
いつの間にやらプツリと立ち上がっていたささやかな実に吸い付かれ、思わず身震いする。ゾロの舌が円を描くように辿り、唇で甘く押さえ込まれて、湿り気を帯びたゾロの頭を抱え込む。こうでもしなけりゃ呆気なく陥落しちまうからだ。呼吸が苦しいだろうにものともせず、欲しいままに靱やかに獣はおれの肉肌を食んでゆく。
「相変わらず、甘ェ」
「は……、甘ェのはお嫌いじゃ、ねェの」
「てめェのはいける、何でもな」
時々コイツが放つ言葉の斬れ味は、本当にタチが悪ィ。
ぎゅん、と心臓が鳴った。
だからてめェには、何もかも注いでやりたくなんだよ。
おれのすっかり立ち上がったモノを握り込み、舐め上げるゾロの頭頂部を掴む。柔らかい。髪も、唇も、そのナカも。
おれを吸って、もっともっと、柔らかく溶けちまえばいい。
内腿にかかる生暖かな吐息に、目眩がする。
荒っぽいくせに解す時は入念なゾロの無骨な中指が、敏感な箇所に触れた。
「ん、ッ!」
危ねェ。このままいっちまったらコイツの思う壷だ。
しっかりおれの反応を観察してやがるからな。
「お前の、で、イきてェ…もう、入れろ」
「……」
ゾロの指が引き抜かれると、そのまま上体を起こさせられた。腰に跨る格好になる。ああ、この体勢は、
容赦しねェ、って宣言だな?
「乗れ」
固い屹立に、己の窪みを充てがう。大きく張ったカリ首まで沈みこませようとする、が、キツい。
ゾロの右手に腰をがしりと固定され、逆の手で狙いを定められる。
その時、唇が甘く塞がれた。コイツは、狡い。おれの弱点を知り尽くしてる、と言わんばかりだ。柔らかい唇に再び食まれると、何かが解ける。つぷり、と屹立が奥へ挿し入った。キツい所を抜け、知らずに、ため息が零れていた。
「ふ……」
「あー……あったけェな」
「アホ、か、炬燵じゃ、ねんだ、よ」
「もっとあちィな、火傷さしてやる」
徐ろに、強い突き上げを食らって声を上げちまった。畜生、この体勢、やり過ごせねェんだよ…!
「は、ァ、あッ、……、クソッッ」
「やられたら、やり返さねェとな」
全部、見られてる。
お前に溺れて、無様に掻き回されるおれを今、全部コイツに見られてるんだな。
いいんだ、構わねェ。コイツになら。
次第に激しく揺さぶられ、焦点が合わなくなる間際に、掴んでいたゾロの項から手をずらし、その獣の瞳を探した。ひた、と目が合った。
紅く紅潮しきった頬。流れ落ちる、額からの汗。そして、湧き出る愉悦に必死で耐える眼が、縋るようにおれを捉えていた。
おれがそうさせてる。
堪らねェ。ゾロ。
溶けて、堕ちようぜ。一緒に。
「ァ、ゾ、ロッ……い、く」
「サ、…」
いま、掠った。
吐いた熱い息に紛れて。でもおれは聞き逃さなかった。

サンジ。

そう呼んだ、よな。今。

聖夜だから、と、普段使わねェご立派なロウソクを灯したのは、昨夜の飯の後。
いつの間にか消えた火の代わりに、満月に近い月の光が薄く差し込んでいた。
暗闇からのそり、と隣で寝返りした獣は今、すっかり大人しい。その滑らかな背中をぼんやりと見つめていると、何かに似てやがる。何だったか…思い出せねェ。
再び寝返り、こちら向きに寝顔を見せる。
「……綺麗だな」
思わず呟いちまった。
パチリ、と目を開けたゾロがすかさず聞いた。
「何が」
「っ、おま、起きてたのかよ…」
「今起きた」
そう言いつつ、おれの上体にのしかかり、腰を抱き寄せる。さっき見つめていた厚い背中が、目の前に無防備に投げ出されていた。
やっぱ、綺麗だ。
「お前の背中」
「……あ?」
「綺麗だっつったの」
「……そうかよ?」
「…中身が綺麗だから、それが現れてる」
「…アホか」
珍しく照れてやがる。
「ウソじゃねェよ」

あの鋭く冷たい剣尖を操る男とは思えないほど、
おれを食む唇は 甘く柔らかい。

fin.

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