初桜

今年も、近所で一番気の早い桜が満開を迎えた。 昨年よりも少し遅く、花冷えのする朝晩を様子見していたのかもしれない。とはいえ周りの見栄えのする大きな桜たちは、まだ悠々と花開かせる準備中である。満開を待てずにカメラを向けるア...

St.Valentine’s day for sz 2022

その花を見つけたのは、偶然だった。 これはきっと我らが一味の麗しき考古学者が、ひっそりと屋上の花壇の隅に植えていたに違いない。そう思って尋ねてみると、「いいえ、知らないわ」と明瞭な答えが返ってきた。彼女が知らないなら、こ...

時計を贈る

時を刻むものを贈る。 それはとても、ベタな行為のように思えた。いや、このおれが、料理ではない何かを誰かに贈るなんてこと自体がだ。レディにならいくらでも捧げる物は思いつく。思いはつくが実際おれは、誰か『特別な』レディに何か...

恋という名の絶望 (R18)

それは、ただの処理だった。 お互いに合意の上で、それ以上のことは望んでいなかった。 何かを欲しいと思った事はある。でもひとりの人間が対象だったことはない。 それなのに。 満たされない。 渇きは、ひどくなる一方だ。 ⭐︎ ...

蓋し夜の果て

虎の目の前で、扉が開いた。 虎は、扉を開けた主をじっと見つめた。一歩、前足を進めるか逡巡した。どうにも間合いを計りかねる。此処への道中、何度もぬかるみを踏みしめて来たせいか、濡れた体毛がまとわりつくせいか、足元が不安定だ...

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