何か今までになくドでかい覇気が島上空に迫っている。覇気、というにはあまりにも強い敵意に満ちた危険な邪気のように思える。
目の前の豹男は想像以上にしつこかった。おれ自身がそうであるように他の連中もそれなりに時を経て強さの格を上げて来ていた。そうでなくちゃ面白くもねェ。己の性質が、どうしたって拮抗した戦闘を楽しんでしまうのはいかんともし難いらしい。相手の攻撃を全て糧として吸収するために、あえて百の力は出し切らずにいた。
それが裏目に出た。
「足手まといが」
おれにとって、最も相応しい火の粉が突然耳に振って来たのだ。
その刹那。腹に点いた火はたちまち細胞という細胞に燃え広がった。それは全身を焼き尽くし、硬く黒く染まった身体から昇竜のごとく立ち上る覇気がおれを制圧しようとするが、既に制御を渡さない術は得た。見上げずとも見える閻魔の軌跡が完璧な螺旋を描いて降りてくるのを静かに待ち、掌に帰ってくるや否や新しい閃光を放った。
「三刀流 虎虎婆 彪狩り!!!」
身を割くように過ぎってゆく漆黒の痺れ。それはおそろしく快感に近かった。
そうして握り直した柄をひと振り、鋒を垂直に落とせば、してやったりのあの男の顔が目に浮かぶ。
悔しい限り。どうせ今おれも同じ顔をしているに違いないのだ。