真夜中のガスパール

 確かに見覚えのある界隈だ。 人通りはすっかり途絶えていた。この辺りは地元の飲み屋が数軒、ひっそりと営業しているだけの、錆びた時代の忘れ物のような通りだ。シャッターを下ろした店が狭苦しく並ぶ寂れた横丁を抜け、歪んだトタン...

眠れぬ夜を

 眠れぬ夜はあきらめて、濃い目の珈琲と肺深くの煙に限る。 電灯のように丸く馬鹿デカい月が宙に浮いているその真下には、ただ無言の黒い海があって、その闇間を月は照らそうとしている。その光から逃げるようにゆらゆらと揺れる波。こ...

紅に染まれば

 今年最後のいのちの波動を見せつけるかのように、今が錦と彩どり豊かな葉を青い天いっぱいに広げた樹林のなかで、常に変わらず緑の葉を為している木々がある。「てめェみてえ」 ボソッと、確信犯的に呟いた男の頭上には、同じ色をした...

航海薄明(連載)

海賊パラレルサンゾロ。ある日の夜、甲板からキッチンにやってきたゾロは全身ずぶ濡れだった。問いただすもいつになく歯切れの悪いゾロにサンジは…?目指せ完結~!!

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